高効率・低コストの電力変換技術で、EV普及と欧州産業競争力を後押し
世界ではガソリン車やディーゼル車を減らし、電気自動車(EV)へ移行する動きが加速しています。欧州連合(EU)は2035年までに新しい内燃機関車の販売を終了する方針を打ち出しており、それに向けてEVの性能向上とコスト削減が大きな課題となっています。
そのカギを握るのがパワーエレクトロニクスです。これは、電気を効率的に変換してモーターを動かしたり、バッテリーを充電したりするシステムの総称です。もし効率が低ければ、航続距離が短くなり、車両価格も高止まりしてしまいます。
この課題に対応するため、EU資金で支援されているSCAPEプロジェクト(2022〜2026年、スペインのCatalonia Institute for Energy Research主導)が始動しました。プロジェクトの目標は、
- 電力変換効率97.5%以上
- 電力密度を2倍に
- 1kWあたりのコストを半減
という、現在の標準を大きく上回る性能を実現することです。これにより、EVはより安く長く走れるようになり、一般消費者にとっても購入しやすくなります。
SCAPEの特徴は、標準化モジュール「スイッチングセル」を組み合わせて車種ごとに対応できる仕組みです。インバータとOBCの一体化で部品を減らし、コストと信頼性を改善します。さらに、チップ埋め込み技術で装置を小型・高効率化し、デジタルツインで異常を予知して信頼性を高めます。これにより欧州は自前の技術でEV普及を後押しし、脱炭素化を加速します。
重要キーワードの解説
パワーエレクトロニクス
電気を変換・制御する技術。EVではモーター駆動や充電効率に直結し、航続距離やコストを左右する中核技術。
スイッチングセル
標準化された小型モジュール。複数を組み合わせることで、車種や用途に応じたパワーコンバータを効率的に構築できる。
チップ埋め込み技術
半導体チップを基板内部に直接配置する革新技術。従来よりも小型・高効率で、発熱を抑え信頼性を高める。

