次世代パワー半導体を搭載した高電圧インバーターが中国大手メーカー向けに採用
日本の半導体メーカーROHMと、ドイツの大手自動車部品サプライヤーSchaefflerが共同で開発した新しい高電圧インバーターブリックが量産に入りました。この製品は中国の大手自動車メーカーに供給され、電気自動車の心臓部ともいえる「電動ドライブ制御」を担います。
インバーターブリックは、車のバッテリーから供給される直流電流を、モーターを駆動するための交流電流に変換する重要な部品です。今回の製品は、従来より高い電圧(通常の800Vを超える水準)に対応し、最大650Aという大電流を扱えるコンパクトな高性能ユニットに仕上がっています。さらに、800VのEVでも400Vの充電器で高速充電できる「DCブースト機能」を備えている点も大きな特徴です。
この進化を支えているのが、ROHMのSiC(シリコンカーバイド)MOSFETです。SiCは従来のシリコンに比べて高耐圧・低損失の特性を持ち、EVの小型化や高効率化に不可欠な次世代パワー半導体とされています。ROHMは第4世代のSiC MOSFETを提供し、Schaefflerはそれをモジュール化・スケーラブルに設計することで、多様な車両に簡単に組み込めるようにしました。
ROHMとSchaefflerの戦略的パートナーシップは2020年から続いており、今回の量産開始はEV普及に向けた重要なマイルストーンです。日本にとっても、SiC分野での競争力強化や、グローバルEV市場における存在感拡大につながる可能性があります。
重要キーワード3つの解説
SiC(シリコンカーバイド)
シリコンに代わる次世代半導体素材。高耐圧・高効率で発熱も少なく、EVや再生可能エネルギー分野で注目されている。
インバーターブリック
電気自動車のモーター制御に欠かせない中核部品。電圧変換・電流制御を行い、車の走行性能や充電効率を左右する。
モジュール性とスケーラビリティ
製品を部品単位で組み合わせやすくし、異なる車両や用途に柔軟に対応できる設計思想。量産性と開発スピード向上につながる。
