電気自動車で150億個の荷物を届けたAmazonが描く、持続可能な物流のかたち
世界最大級の小売企業Amazonが、電気自動車(EV)の導入を通じて物流の脱炭素化を本格的に進めています。現在、3万台以上の電気配送車を保有し、すでに15億個以上の荷物を世界中の顧客に届けてきました。これは単なる技術導入ではなく、Amazonが掲げる「クライメート・プレッジ(気候変動対策宣言)」の一環として、企業の枠を超えた大きな意義を持つ取り組みです。
この変革は2019年、EVスタートアップのRivianとのパートナーシップから始まりました。以来、Amazonはインドを含む世界中でEVを導入し、インドでは2024年に1万台の導入目標を1年前倒しで達成。さらに、アメリカでは1万1,770基の充電器を全国50か所の配送拠点に設置し、米国内最大のプライベート充電ネットワークを構築しました。
しかし、EVの導入は簡単ではありません。Amazonは「土地やエネルギーの制約」「貿易障壁」「インフラ整備コスト」などの課題に直面しています。それでも、官民パートナーとの連携を強化しながら、グローバルでのEV拡大に挑戦し続けています。
ヨーロッパでは2030年までにゼロ排出の配送車を倍増させる目標を掲げ、メルセデス・ベンツのeActros 600を200台導入。これにより、年間3億3,800万個の荷物輸送を見込んでいます。また、長距離輸送を担う「ミドルマイル」領域でもEVトラックを導入中で、輸送のすべての段階で脱炭素化が進行中です。
今後、Amazonの取り組みが他の物流・小売企業にも波及すれば、業界全体の変革にもつながります。RivianのCEOが語るように、「一社の効率化が、他社の変革を促す“エコー効果”」を生み出すのです。
今後の展開とインパクトの可能性
AmazonのEV導入は単なる企業の環境対策にとどまらず、物流業界の構造改革を促す可能性を秘めています。政府や他企業との連携により、世界的なインフラ整備が進めば、持続可能なサプライチェーンが標準になる未来も見えてきます。加えて、Amazonが開発中の充電ネットワークやデータ活用による最適化は、今後EV導入を考える中小企業にも利用される可能性があり、「脱炭素の民主化」が進むかもしれません。
重要キーワード3つの解説
- クライメート・プレッジ(The Climate Pledge)
Amazonが創設した、2040年までにカーボンニュートラルを目指す国際的な誓約。この約束の実現に向けて、EVの導入は中心的な役割を果たしています。 - ミドルマイル(Middle Mile)
商品がAmazonの倉庫間を移動する配送ステージのこと。長距離輸送でのEV活用は、CO₂削減効果が高く、Amazonのネットワーク全体にとって重要な位置づけです。 - Rivian(リヴィアン)
Amazonと提携する電気自動車メーカー。Amazon専用の配送車両を開発・供給しており、EVの普及に大きな影響を与えています。