オン抵抗を従来比50%低減、より小型・高効率な電力変換を可能に
近年、自動車産業では電動化が加速し、同時にAIやクラウドの普及でデータセンターの電力需要も急増しています。どちらの分野でも共通して課題となっているのが、「いかに効率よく電力を変換・利用できるか」です。
ここで注目されているのが、従来のシリコンに代わる次世代パワー半導体材料「GaN(ガリウムナイトライド)」です。GaNは高電圧に強く、エネルギー損失が少ないため、電気自動車(EV)の駆動用インバーターや充電システム、さらには消費電力の大きいデータセンターの電源装置で効率改善が期待されています。
イスラエルのVisIC Technologiesは、このGaN技術を自動車や産業用途に向けていち早く実用化してきた企業です。初代(Gen 1)から改良版(Gen 1+)、そして今回の第2世代「Gen 2」まで進化を重ねることで、シリコンを超える性能を実証してきました。
Gen 1ではEVや産業機器におけるGaNの有効性を示し、Gen 1+ではさらに効率を高めて50〜150kW級の電力変換を支える性能を実現。そして今回のGen 2は、オン抵抗(RDS(ON))を4mΩまで低減し、従来比で最大50%の小型化を達成しました。これにより、EVでは航続距離の向上や冷却装置の小型化が可能となり、データセンターではAI需要に対応するための高効率・高密度な電源供給が可能になります。
VisICは今後、パッケージ化製品や半橋モジュールも投入予定であり、量産EVや大規模データセンターにとって実用的なソリューションが現実味を帯びてきました。
CEOのTamara Baksht氏は「世代ごとにRDS(ON)を下げ続け、より効率的でコスト効果の高い電力変換を可能にする」と述べており、GaNが今後の電動化社会を支える重要技術であることを示しています。
重要キーワード3つの解説
GaN(ガリウムナイトライド)
シリコンに代わる次世代半導体素材。高耐圧・低損失・高効率で、EVやデータセンターなどの高電力用途で注目されている。
インバーター(電力変換装置)
バッテリーの直流電流を交流に変換し、モーターを駆動する装置。効率が上がるほどEVの航続距離が伸び、冷却装置も小型化できる。
RDS(ON)(オン抵抗)
半導体スイッチがオン状態のときの抵抗。数値が小さいほどエネルギー損失が少なく、効率が高い。

