人の存在や行動を理解する次世代ドライバー・乗員監視システムが本格始動。安全性と快適性を両立する新しい車内体験へ。
スウェーデンのTobiiとスイスのSTMicroelectronicsは、欧州の高級自動車メーカー向けに、車内センシング技術を用いた先進的なドライバー・乗員監視システムの量産を開始しました。両社が協力して開発したこの新システムは、1台のカメラで昼夜を問わず車内全体を高精度に認識できるのが特徴です。
Tobiiは長年にわたり視線追跡技術(eye tracking)とアテンション・コンピューティングの分野をリードしてきました。一方、STMicroelectronicsは自動車用半導体のトップ企業であり、今回採用されたVD1940イメージセンサーは、RGBと赤外線の両方を1つのセンサーで処理できるハイブリッド設計を採用しています。これにより、昼間はカラー映像、夜間は赤外線映像でドライバーと乗員の動きを正確に把握できます。
Tobiiのアルゴリズムは、ドライバー監視システム(DMS)と乗員監視システム(OMS)の両方をサポートし、車内の安全だけでなく、快適なユーザー体験を実現します。例えば、居眠りや視線の逸れを検知して警告を出すほか、乗員の体調や姿勢を認識してエアコンやシート設定を自動調整することも可能です。
STMicroelectronics側は、「SafeSense by ST」という安全性とサイバーセキュリティを重視した技術プラットフォームの一部として、このセンサーを提供しています。欧州内の自社工場で製造されており、供給の安定性も確保されています。
両社は今後、他の自動車メーカーへの採用拡大を見据え、量産体制の強化を進めています。この技術は、将来的に自動運転車やスマートキャビンの分野でも中核的な役割を果たす可能性があります。安全と快適性を両立するこの新しい車内センシング技術は、今後のモビリティ体験を大きく変える一歩となりそうです。
重要キーワードの解説
- Driver Monitoring System(DMS):ドライバーの視線や頭の動きを分析し、眠気や注意散漫を検出するシステム。
- Occupancy Monitoring System(OMS):車内の乗員数や位置、姿勢などを把握し、安全装備や快適性を最適化する技術。
- Attention Computing:人の「注目」や「意識の向き」をAIが理解する技術。Tobiiの中核技術。
- SafeSense by ST:STMicroelectronicsが提供する自動車向けセンシング技術の統合ブランド。安全性と信頼性を重視して設計。