95%効率を実現するPowiGaN搭載、学生チームが挑む世界最大級のソーラーカーレースに無償提供
米国のPower Integrationsは、オーストラリアで開催される世界的なソーラーカーレース「Bridgestone World Solar Challenge」に合わせ、学生チーム向けに新しいリファレンスデザインキット「RDK-85SLR」を発表しました。このキットは、太陽光発電を動力源とするレーシングカーに搭載される補助電源の開発を支援するために設計されており、学生チームはオンライン登録を行えば無償で入手できます。
RDK-85SLRは、同社のInnoSwitch3-AQとPowiGaN™(ガリウムナイトライドスイッチ技術)を採用しており、最大95%という高い変換効率を実現しています。46Wの定格出力を持ちながら短時間で80Wまで供給でき、しかも放熱器を不要とする設計によって軽量・小型化を可能にしています。これにより、競技車両における重量削減や省スペース化が実現し、レース戦略にも直結する利点をもたらします。
今回の設計はスイスのETH Zurichの学生チーム「aCentauri」と共同開発されたもので、2023年大会で実証済みです。当時のチームは「審査員が放熱器のない補助電源に驚いた」と語っており、GaN技術の信頼性と効率性を実証しました。
Power Integrationsは学生チームのスポンサーとしても活動しており、次世代エンジニアが持続可能な技術に触れる機会を広げています。ソーラーカー競技を通じて培われる技術は、将来的に自動車や再生可能エネルギー分野の実用製品にも波及する可能性が高く、日本の技術者にとっても注目すべき動きと言えるでしょう。
重要キーワード3つの解説
PowiGaN™(GaNスイッチ技術):シリコンに代わる次世代半導体素材。高効率・高周波動作が可能で、電源を小型・軽量・高効率にできる。
Bridgestone World Solar Challenge:世界最大規模のソーラーカーレース。オーストラリア大陸を横断する過酷な競技で、世界中の大学・企業チームが最新技術を競う。
RDK-85SLR:Power Integrationsが提供するリファレンスデザインキット。46Wの電源を簡単に構築できる教材兼開発キットで、学生チームの設計を支援する。