AI・データ・ゼロカーボンを導入し、製造業の新しいモデルを提示
中国の大手合弁自動車メーカーである一汽-大众(FAW-Volkswagen)は、長春・成都・佛山・青島・天津にある5つの整車工場と、バッテリー工場を含む全拠点が、そろって「先進級スマート工場」に認定されたと発表しました。
ここでいう「スマート工場」とは、IoT(モノのインターネット)、AI、ビッグデータなどを活用して、自動化・効率化・省エネを実現した工場を指します。製品の設計から生産、品質管理、物流、エネルギー使用までをデジタルでつなげ、リアルタイムに最適化するのが特徴です。欧米や日本でも同様の動きがありますが、中国では国の産業政策と連動して急速に普及が進んでいます。
一汽-大众はフォルクスワーゲンと中国第一汽車の合弁会社で、中国国内ではトヨタやホンダに匹敵する規模の完成車メーカーです。同社はこれまでも内燃機関車と並行してEVの生産を進めてきましたが、今回の認定は「工場レベルでの全面的なデジタル化と電動化への適応」が評価された形です。
各工場では特色ある取り組みが進んでいます。
- 成都工場はデジタルツインや大規模データ解析を導入し、精密で無駄のない生産を実現。
- 佛山工場はEVを中心とした「新エネルギー車工場」として、物流や組立のデジタル化を加速。
- 青島工場は行政と連携し、他工場でも再現可能な19のデジタル化モデルを構築。
- 天津工場はAIを使った自動検査や柔軟な生産ラインで30以上の新技術を導入。
- バッテリー工場はAI検査や予知保全の仕組みを導入し、さらに再生可能エネルギーを活用したゼロカーボン工場認証を獲得。
これらの取り組みによって、一汽-大众は「コスト削減・効率向上・品質改善・環境対応」を同時に進めています。
中国では「スマート工場」は国の産業競争力を高める戦略の一環として推奨されており、今回の一汽-大众の事例は、中国自動車産業がデジタル技術を背景に急速に進化している証拠と言えるでしょう。日本の自動車産業にとっても、電動化だけでなく製造プロセス全体のデジタル化が競争力の鍵になる可能性があります。
重要キーワード3つの解説
スマート工場:AIやIoTを使い、生産効率や品質を自動的に改善する次世代工場。人手不足やコスト高への対応策としても注目。
デジタルツイン:工場や生産ラインをデジタル空間に再現し、試行錯誤や改善を仮想空間で行える技術。
ゼロカーボン工場:再生可能エネルギーや蓄電池を導入し、CO₂排出を実質ゼロにする取り組みを実現した工場。