アメリカ政府が自動運転車の安全基準を大改革へ

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時代遅れの規制を見直し、安全を優先しつつ自動運転車の商業展開を後押し

2025年9月4日、ワシントンD.C.でSean P. Duffy運輸長官は、国家道路交通安全局(NHTSA)が自動運転車に対応するため、連邦自動車安全基準(FMVSS)の大規模な改正に着手すると発表しました。これまでの基準は数十年前に作られたもので、人間が運転することを前提にしており、ハンドルやペダルを持たない車の存在を想定していませんでした。

今回の改正はDuffy長官の「イノベーション計画」の一環であり、自動運転車の全国展開を見据えたAVフレームワークを実現する動きです。彼は「アメリカが交通の革新をリードしなければ、敵対国がその空白を埋めてしまう」と強調し、安全を最優先にしながらも不要な規制を排除し、単一の国家基準を作ることが不可欠だと語りました。

NHTSAは今回、三つの基準改正に着手します。

第一は変速装置や始動に関するルール、第二はフロントガラスの曇り止めやワイパーに関する規定、そして第三はヘッドライトや反射板などの灯火装置の基準です。

いずれも人間のドライバーを前提に設計されており、自動運転車には必ずしも適合しません。

さらに注目されるのが、免除制度(Part 555)の簡素化です。この制度は、FMVSSに完全には準拠していない車でも、特別な理由があれば一時的に販売や運行を認める仕組みです。たとえば、新しい自動運転技術の実験、安全性が同等以上と証明できる場合、あるいは障害者向けの特殊改造車などに活用されてきました。

ただし、この免除は大量生産を前提とせず、年間2,500台までという上限が法律で定められています。これはまだ安全性の検証が十分でない技術を一気に広めるリスクを避けるためであり、「社会実験規模」にとどめる工夫です。これまで申請手続きは煩雑でしたが、2025年6月にNHTSAとDuffy長官はこれを簡略化すると発表しました。その結果、WaymoやTeslaといった大企業はもちろん、小規模スタートアップや大学の研究チームも、少量の車を市場に出して実証実験を行いやすくなります。

今後の展開としては、これらの改正が2026年春以降に施行されれば、自動運転車の商業導入が一気に加速する可能性があります。一方で、事故やトラブルが起きた際の責任の所在や安全性の担保については依然として課題が残っており、米国内外で議論が続くと見られます。日本の関係者にとっても、この動きは今後の国際的な規制調和や市場競争に大きな影響を与えることになりそうです。


重要キーワード3つの解説

① AVフレームワーク(Automated Vehicle Framework)
アメリカ運輸省が掲げる、自動運転車の普及に向けた包括的な政策枠組み。安全性を確保しつつ、規制の無駄を削ぎ落とし、商業展開を可能にするのが狙い。

② FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standards)
アメリカの連邦自動車安全基準。車の部品や性能に関する詳細な規則が定められているが、これまでは人間の運転を前提にしていた。

③ Part 555免除制度
既存の基準に完全に合わない車でも、特定条件を満たせば年間最大2,500台まで販売できる特例。新技術の実証や障害者向け車両に活用されてきた。2025年から手続きが簡素化され、導入が容易になる。

NHTSA

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