国家安全保障と国内供給網保護を理由に、半導体や医薬品など複数製品への高関税を検討中。
2025年8月7日、ドナルド・トランプ大統領はホワイトハウスでの記者会見にて、半導体の輸入に約100%の関税を課す方針を明らかにしました。詳細な発効日や正式な文書の発表時期についてはまだ明言されていませんが、発言のタイミングから近日中の実行が予想されます。
今回の発表は、通商拡大法232条(セクション232)に基づく調査の一環として行われたものです。この調査は、特定の輸入製品が国家安全保障や国内供給網に与える影響を評価するために実施され、これまでも鉄鋼やアルミニウムなどに関税が適用されてきました。
半導体に加え、医薬品にも最大250%の関税が検討されており、トランプ政権は近くこれらの分野で正式な関税発表を行う見通しです。また、現在は他にも重要鉱物や航空機、エンジン、大型トラック部品などへの調査も進行中で、関税の対象がさらに拡大する可能性もあります。
この日ホワイトハウスでは、AppleのCEOティム・クック氏が登場し、今後4年間で米国製造業に1,000億ドルを投資する計画を発表しました。Appleは2025年2月にも、5,000億ドルの国内投資を発表しており、今回の追加投資は関税政策に呼応した動きとも考えられます。
一方で、台湾のTSMCやNVIDIAといった大手半導体メーカーも、ここ数ヶ月で米国内への大規模投資を相次いで発表しており、関税政策がグローバル企業の戦略を大きく動かす可能性もあります。
重要キーワード3つの解説
- セクション232(通商拡大法232条)
米国が輸入製品の国家安全保障への影響を評価するために使う法律。この調査に基づいて関税などの貿易措置が取られることがあります。 - 半導体(チップ)
コンピューターやスマートフォン、車、医療機器など、現代社会のあらゆる電子機器に使われる重要部品。世界的な供給不足や地政学リスクの影響を受けやすい。 - 関税(Tariff)
輸入品に課される税金のことで、自国産業を保護する目的で使われます。高関税は製品価格の上昇や貿易摩擦を引き起こす可能性もあります。
今後の展開とインパクト
この関税案が実行されれば、海外からの半導体調達コストが倍増し、アメリカ国内での生産回帰が一気に加速する可能性があります。Appleのように大規模な製造投資を行う企業が増える一方で、輸入に依存している中小企業や消費者には価格上昇のリスクがあるとも懸念されています。
特に、中国・台湾・韓国などアジアの半導体大国との貿易摩擦の激化や、WTOルールとの整合性を巡る国際的な議論も避けられない展開になるでしょう。
しかしこの動きが功を奏すれば、米国が「半導体製造の主戦場」に再び返り咲く可能性もあります。産業政策としての成否が問われる重大な一手です。