広がらない北米の超小型EV――規制と市場の壁に挑むスタートアップたち

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NEVの苦戦、そして見え始めた可能性

欧州や中国で超小型EVが急速に広がる一方で、米国を中心とする北米では状況が大きく異なります。その理由のひとつが、車両区分の規制です。米国では小型EVは「低速車両(LSV)」に分類され、最高速度は25マイル(約40km/h)以下と定められています。そのためシトロエン「Ami」のように時速45km/h以上で走れる車両は、通常の自動車と同じ厳格な基準を満たさなければならず、軽量で安価な超小型EVが普及しにくい状況となっています。現状では、フロリダやアリゾナなどリタイア層が多い地域のコミュニティでNEV(近距離EV)が利用されている程度で、市場全体から見ればごく限定的です。

それでも一時期、スタートアップ企業がユニークな三輪EVで突破口を開こうとしました。オレゴン州のArcimoto社は、最高速度120km/hで高速道路も走れる「FUV(Fun Utility Vehicle)」を展開し注目を集めましたが、販売は伸び悩み、2023年には資金難で生産停止に追い込まれました。カナダのElectraMeccanica社が発売した一人乗り三輪EV「Solo」も、全車リコールという設計不具合により2023年に生産終了。さらに、ソーラーパネル搭載で航続1600kmを謳ったカリフォルニアのAptera社も資金調達に苦戦し、量産化の目途は立っていません。結果として、北米の超小型・三輪EVスタートアップは軒並み壁に直面しています。

しかし、希望がないわけではありません。ゼネラルモーターズ(GM)は中国で成功した五菱ミニEVのコンセプトを逆輸入する可能性を模索しており、一部の州ではLSVの速度制限を35マイルへ引き上げる議論も始まっています。また、三輪EVの免許要件緩和など規制の見直しも進みつつあります。テスラのイーロン・マスク氏もかつて「都市向け小型EV」の可能性に言及しており、今後政策的な後押しやユーザー意識の変化次第で、北米でも小型パーソナルEVが注目される可能性があります。

現在の米国市場ではピックアップトラックやSUVが圧倒的に主流であり、超小型EVはまだニッチに留まっています。しかし、環境負荷削減や都市部の駐車問題など社会的課題が後押しとなれば、中長期的には新たな展開が生まれるかもしれません。

重要キーワード3つの解説

  • 低速車両(LSV)規制
    米国では小型EVはLSVに分類され、最高速度25マイル以下に制限されている。この規制が普及の大きな壁となっている。
  • 三輪EVスタートアップ
    ArcimotoやElectraMeccanica、Apteraなどが独自の三輪EVを開発したが、資金難やリコールで相次ぎ失敗。市場参入の難しさを示す事例となった。
  • NEV(近距離EV)
    ゴルフカート由来の小型EVで、リタイア層のコミュニティなど一部地域で利用されるが、全国的にはニッチな存在に留まっている。

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