独ポルシェ、バッテリー戦略を再編

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世界的なEV市場の変化を受け、Cellforce Groupは電池セルとシステム開発に特化

スポーツカーメーカーのPorscheは、電動化を未来の重要な駆動技術と位置づけながらも、バッテリー事業の方向性を見直しました。背景には、米国や中国での電動化の進展が予想よりも遅れていることがあります。これにより、子会社であるCellforce Group GmbHは、自社によるバッテリーセルの量産計画を断念し、今後は研究開発に専念することになりました。

一方で、Porscheは電動化の道を変えるわけではありません。2025年上半期、欧州での電動化率は57%に達し、IPO時に掲げた目標を上回っています。特にTaycanやMacanといったEVモデルは市場で高い評価を受けており、今後はCayenneや718シリーズでも電動化が進む予定です。

ただし、世界全体を見ると状況は異なります。欧州では電動化が急速に広がっているものの、米国では需要が伸び悩み、中国の高級EV市場も未成熟です。そのため、Porscheは自社でのバッテリー生産による規模拡大は現実的でないと判断しました。今後はCellforceの技術力をR&Dユニットとして活かし、グループ全体や外部企業との協業を進めます。

さらに、VolkswagenグループのPowerCoがCellforce社員に雇用の機会を提供するなど、社会的に配慮した人員調整も進められています。また、VARTAから取得したV4Smartの技術を活かし、911シリーズに性能向上のためのリチウムイオンブースターセルを搭載するなど、研究成果はすでに実用化されています。

この戦略転換は、単なる撤退ではなく「持続可能な電動化の加速」に向けた再配置といえるでしょう。今後、Porscheが開発力をどのように市場優位性につなげるかが注目されます。

重要キーワード3つの解説

Electrification Rate(電動化率)
Porscheの販売台数のうち、ハイブリッドやEVを含む電動化モデルの割合を指します。2025年上半期の欧州では57%に達し、同社の電動化戦略が順調に進んでいることを示しています。

Cellforce Group
Porscheとパートナーが設立したバッテリー開発会社。当初は高性能バッテリーセルの量産を目指していましたが、市場環境の変化により、今後は研究開発に特化します。

PowerCo
Volkswagenグループのバッテリー事業統括会社。セルの量産や技術開発を担い、Cellforceの技術や人材も取り込むことで、グループ全体の電動化を推進する役割を果たします。

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