どこでも高速通信を可能にし、安全性と自動運転の進化を後押しする次世代技術。
LG Innotekは2025年6月9日、世界で初めて「自動車向け5Gブロードバンド衛星通信モジュール」を開発したと発表しました。これまで車載用に使われていた衛星通信モジュールは、狭帯域(約0.2MHz)の通信に限られ、速度も数百kbps程度と低速で、テキスト送信など限定的な用途にしか対応できませんでした。
今回の新製品は30MHzの広帯域(NR-NTN規格)を活用し、数十Mbpsの高速通信と数百ミリ秒単位の低遅延を実現。従来より数百倍の速度で、音声・画像・動画といった大容量データをどこでも送受信できます。これにより、自動運転に必要なリアルタイム通信や緊急時の救援要請、さらには災害時における通信確保まで幅広い用途が可能となります。
さらに、このモジュールは国際標準「3GPP Release 17」に準拠しており、世界中の自動車メーカーに採用されやすい点も強みです。LG Innotekは2005年から培った車載通信技術やRF設計、アンテナ開発のノウハウを活かし、すでに「初代車載5G通信モジュール」や「5G-V2Xモジュール」などを市場に投入してきました。今回の「第3世代」製品はその延長線上にある戦略的な技術といえます。
今後の展開とインパクト
LG Innotekは2026年第1四半期に量産を開始し、北米や日本の自動車メーカーへの拡販を進める予定です。自動運転車やSDV(Software-Defined Vehicle)には、どこでもつながる通信が不可欠であり、このモジュールは安全性と利便性の両立に直結します。
また、業界予測によると車載5G通信モジュール搭載車は2024年の400万台から2032年には7,500万台へと急増する見込みで、年平均成長率は43%に達します。つまり、この分野での技術リーダーシップを握ることは、LG Innotekにとって8億ドル規模の新たな事業柱となり得ます。
今回の発表は単なる製品リリースにとどまらず、自動車の安全性・自動運転・コネクテッドサービスの未来を左右する転換点といえるでしょう。
重要キーワード3つの解説
- NR-NTN(5Gブロードバンド衛星通信)
既存の狭帯域ではなく、広帯域での高速・大容量通信を可能にする規格。地上基地局がなくても衛星経由で接続できる。 - 3GPP Release 17
世界標準化団体3GPPが策定した第17版規格。5Gを地上から非地上(衛星)まで拡張し、グローバル展開を支える基盤。 - Software-Defined Vehicle (SDV)
車の機能をソフトウェアで制御・更新できる新しい自動車概念。リアルタイム通信が安全性と進化のカギを握る。