Lyten、Northvolt資産を一挙買収へ ― 欧州と北米のバッテリー産業に新時代

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スウェーデンとドイツの工場を再稼働、雇用とエネルギー自立を後押し

アメリカの電池メーカーLytenが、スウェーデンとドイツにあるNorthvoltの工場や研究施設を買収することで合意しました。Northvoltは一時期「欧州の希望」と呼ばれた電池メーカーでしたが、経営悪化により多くの資産が売却されることになっていました。今回の取引により、Lytenは16GWh分の稼働中の生産能力と、15GWh以上の建設中設備を手に入れます。これは電気自動車に使うバッテリー数百万台分に相当する規模です。

Lytenが注目される理由は、同社が開発するリチウム硫黄電池です。従来主流のリチウムイオン電池に比べて軽量で高性能、さらに資源調達が容易でコストも抑えられるため、電気自動車やAIデータセンター、防衛関連など幅広い分野で需要が見込まれています。欧州や北米ではエネルギー自立や安全保障が重要なテーマとなっているため、今回の買収は技術面だけでなく政治・経済面でも大きな意味を持ちます。

さらにLytenは、カナダのケベック州にあるNorthvoltの新工場の取得も検討しており、北米での供給体制も強化する構えです。スウェーデン政府も「雇用とエネルギー独立の両面で勝利」と歓迎しており、国家レベルでの後押しも見込まれます。日本企業にとっては、欧州でのサプライチェーン再編が進む中で、Lytenとの新たな協業機会を探る好機といえるでしょう。

重要キーワード3つの解説

  • リチウム硫黄電池(Lithium-Sulfur Battery)
    リチウムイオン電池の次世代版といえる電池。軽くて容量が大きく、レアメタル使用量も少なくできるため、コストや環境面で有利です。
  • Northvolt資産(Northvolt Assets)
    かつて欧州で注目された電池メーカーNorthvoltの工場や研究施設。Lytenが取得することで、すぐに大規模生産が可能になります。
  • エネルギー自立(Energy Independence)
    欧州や北米が輸入に頼らず、地域内でエネルギー供給を完結させること。地政学リスクが高まる中で、電池産業の地産地消は戦略的に重要になっています。

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