なぜバッテリー価格が下がってもEVは高いのか?

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電池は安くなっても、クルマの値段は下がらない。その背景にはサプライチェーン、人件費、メーカー戦略、そして技術的な壁がある。

ここ十数年でバッテリーの価格は劇的に下がり、1kWhあたりのコストは2010年の10分の1にまで落ち込みました。普通なら車両価格も下がりそうですが、アメリカやヨーロッパでは新車EVの平均価格は依然として5万ドル台後半で、ガソリン車より高止まりしています。

理由のひとつはサプライチェーンです。半導体不足や物流の混乱に加え、リチウムやニッケルの高騰が続きました。中国メーカーは資源調達から電池生産までを一体化し、効率化でコストを抑えていますが、欧米メーカーは分散した供給網と規制のためコストを下げにくいのです。その差は価格にも表れ、同じ航続距離でも中国製EVは欧米製の4〜6割安で販売されています。

また、人件費や製造コストの高さも重荷です。米国では労組との新契約で1台あたり数百ドルの人件費増、欧州も高い電力料金が響いています。EVはまだ生産規模が小さく、フォードは1台売るごとに数万ドルの赤字と報じられるほど。対照的に中国は自動化や新工場で効率を上げ、競争力を増しています。

政策面では、アメリカのインフレ抑制法が補助金を提供する一方で、国産要件が厳しく多くのモデルが対象外になっています。欧州では補助金縮小でEVが数千ユーロ高くなった国もありますが、逆に厳しい排ガス規制が2万5千ユーロ前後の低価格EV投入を後押ししています。

さらに、自動車メーカーの戦略も価格を押し上げています。多くのメーカーはまず高級SUVや長航続モデルを投入し、平均価格はむしろ上がっています。低価格帯のEVはごくわずかで、これは「先に余裕のある層に売り、投資を回収する」という思惑があるからです。

技術的な要因も無視できません。長距離走行のために大型バッテリーや軽量素材を採用し、モーターやパワーエレクトロニクス、ソフトウェア開発もまだコストが高いのです。研究開発や新工場への投資を少量生産で回収している段階なので、どうしても価格が下がりにくい構造になっています。

ただし今後は状況が変わる可能性があります。各社が2万5千〜3万ドルの新モデルを計画しており、中国メーカーとの競争も激化しています。競争と規模拡大が進めば、EV価格はガソリン車に近づく未来が現実味を帯びてきそうです。

重要キーワードの解説

  • サプライチェーン:原材料の調達から完成車までの流れ。中国は一体化で安く、欧米は分散で高コスト。
  • 補助金と規制:価格を下げる助けにもなるが、要件や削減で逆に高くなる場合もある。
  • スケールメリット:大量生産によるコスト削減効果。EVはまだ規模が小さいため価格が高止まりしている。

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