EV価格を左右する政策の光と影―補助金と規制のはざまで

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補助金で安くなる一方、厳しい規制や関税が価格を押し上げる。政策はEV普及を促進しつつも、消費者負担を完全には軽減していない。

電気自動車(EV)の価格には、政府の政策や規制が大きな影響を与えています。補助金は一見価格を下げる要因に見えますが、同時に新しい規制や貿易措置がコストを引き上げる要因となっており、その効果は相殺されがちです。

アメリカでは、インフレ抑制法(IRA)が最大7,500ドルの税額控除を提供しています。2024年からは販売店で即時に適用される仕組みになり、購入時の負担は確かに軽くなりました。しかし、その裏には厳しい「米国内調達要件」があり、多くのモデルが補助対象から外れてしまいました。結果として補助金を失った車種は相対的に高く見えてしまい、メーカーは値下げか販売減のリスクに直面しています。ヨーロッパでも同様で、ドイツが2023年末に個人向け補助金を打ち切ったことで、消費者の負担は数千ユーロ増し、販売の勢いも落ち込みました。

また、規制順守のコストも見逃せません。安全基準や環境規制、バッテリーリサイクル義務など、欧州の「グリーンディール」に基づく要件は長期的には持続可能性を高めますが、短期的には製造コストを膨らませます。さらに、新技術の認証やソフトウェアのセキュリティ規制への対応など、複雑化する義務が積み重なり、最終的には車両価格に転嫁されているのです。

そこに加えて影響するのが、貿易政策と関税です。米国は中国製EV部品への関税を課し、欧州も中国EVへの反補助金調査を開始しました。こうした措置は国内産業を守る狙いがありますが、短期的には消費者が払う価格を引き上げます。メーカーは低コストのグローバル調達を諦め、より高コストな地域での生産にシフトせざるを得ないのです。

ただし政策がもたらすのはコスト増だけではありません。欧州のCO₂規制や米国のEPA規則は、メーカーにより多くのEVを販売するインセンティブを与えています。その結果、2025~2027年には2万5千ユーロ以下や3万ドル前後の低価格モデルが相次いで登場すると期待されています。実際、GMは3万ドルのEquinox EVを予定し、欧州メーカーも大衆向けモデルの投入を発表しています。規制は一時的に価格を押し上げつつも、普及を広げるための低価格EV開発を後押ししているのです。

総じて言えば、政策は両刃の剣です。補助金や規制は普及を促す一方で、関税や厳格な要件はコストを高止まりさせています。現時点ではガソリン車に比べてEVの購入価格はまだ高いものの、今後の政策次第では大衆向けEVが本格的に普及する可能性も見えてきました。

重要キーワード3つの解説

  • 補助金と税制優遇:消費者の負担を減らすが、対象要件が厳しく、恩恵を受けられる車種は限られる。
  • 規制順守コスト:安全・環境・リサイクル規制などが短期的には価格上昇要因となる。
  • 関税と貿易政策:国内産業保護のために導入されるが、輸入部品や完成車のコストを押し上げる。

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