なぜEVは高級路線ばかり?―自動車メーカーの価格戦略の裏側

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バッテリー価格が下がっても、EVが安くならないのはなぜか。その答えはメーカーの戦略にある。

EVが高止まりしている背景には、自動車メーカーの価格戦略もあります。欧米ではこれまで、メーカーが意図的に高価格帯のモデルを中心に展開してきたため、平均価格が下がりにくい状況が続いています。

まず、各社はプレミアムモデルを優先して投入しました。北米でも欧州でも、高級SUVやスポーツ性能を強調したEVが主力となり、欧州ではEV販売の64%がプレミアムクラス以上に偏るまでになりました。バッテリーコストが下がったにもかかわらず、平均車両価格はむしろ上昇しています。富裕層やアーリーアダプターをターゲットにすることで、メーカーは研究開発費を回収しやすく、コスト低減分も価格引き下げより利益確保に回されてきました。

さらに、EVはしばしば「ハイテク商品」として演出されます。標準で大型ディスプレイや先進運転支援機能、急速充電対応などを備えているため、必然的にベース価格が高くなります。たとえばフォードはF-150ライトニングをまず7万ドル超の上位グレードから発売し、ガソリン車の価格と大きな差をつけました。高級感を演出するこの戦略は、EV=高価な商品という印象を強めています。

もちろん、すべてのメーカーが大きな利益を得ているわけではありません。フォードや新興EVメーカーは赤字を抱えていますが、需要が旺盛だった2021~2022年には、多くの自動車会社があえて価格を下げる必要を感じませんでした。予約が殺到する状況では値引きする理由がなく、むしろ値上げやディーラーによる上乗せ販売が横行しました。ところが2023年以降は在庫が増え、需要の伸びが鈍化。米国では2025年半ばにEV1台あたり平均8,451ドルもの販売奨励金が投入されるようになり、ついに市場が価格競争の段階へ入り始めています。

しかし、依然として「手の届くEV」が少ないのが現状です。欧州調査では35%の消費者が「2万5千ユーロのEVがあれば1年以内に買う」と回答しているにもかかわらず、実際にその価格帯のモデルはほとんどありません。一方で中国は事情が異なります。2万ドル以下のEVが多数存在し、5千ドル前後の超低価格モデルまで登場しています。性能面でも、中国製EVは欧米車の6割程度の価格で同等の航続距離を実現する例が増えており、西側市場に強いプレッシャーを与えています。

最近ではテスラの大幅値下げや、フォルクスワーゲンがID.3の価格を約20%引き下げるなど、戦略の変化が見え始めました。さらに2025~26年には2万~2万5千ユーロ級の大衆向けEVが相次いで登場予定です。つまり、これまで高級路線で維持されてきた価格設定は、競争と規制に押され、より幅広い消費者に手が届く方向へシフトしつつあるといえます。

重要キーワード3つの解説

  • プレミアムモデル偏重:高級SUVやセダン中心に展開し、平均価格を引き上げた。
  • ハイテク装備標準化:先進機能を搭載した結果、ベース価格そのものが高くなった。
  • 価格競争の到来:中国勢の台頭や需要鈍化で、欧米メーカーも値下げを余儀なくされつつある。

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