自動車グレードの安全性を備えた開発キットが、世界のモビリティ開発を加速
2025年8月25日、NVIDIAは自動運転車の開発を進めるための新しいツールセット「DRIVE AGX Thor Developer Kit」を発表しました。この開発キットは「高性能な計算能力」と「自動車向けの安全性・接続性」を両立しており、自動運転や先進的なモビリティサービスを作るための基盤となるツールです。
従来の車載コンピュータよりもはるかに高性能で、NVIDIA独自の最新チップ(Blackwellアーキテクチャ)と、次世代のArmベースCPU(Neoverse V3AE)を組み合わせています。さらに、DriveOS 7と呼ばれる車載専用のソフトウェアが搭載されており、AIの処理を効率的かつ安全に行うことができます。
また、このキットは自動運転に不可欠な360度カメラ、レーダー、LiDAR(光で距離を測るセンサー)といった多種多様なセンサーを接続できるだけの入出力(I/O)を備えています。車載ネットワーク(GbE/10GbE)やPCI-Expressといった標準的な自動車向けインターフェースにも対応しているため、自動車メーカーが実際の車両環境に組み込んでテストを行うのに適しています。
さらに、DRIVE AGX ThorはISO 26262(機能安全)やISO 21434(サイバーセキュリティ)といった自動車業界の厳格な国際規格に準拠。これは従来のAIコンピュータにはない大きな特徴であり、量産車への実装を視野に入れた開発が可能です。
すでにBYD、GAC、IM Motors、Li Auto、Volvo Cars、Xiaomi、Zeekrといった世界的自動車メーカーが採用を進めており、Aurora、Gatik、PlusAI、Waabiといった自動運転トラック開発企業も活用を開始しています。Tier1サプライヤーのContinental、Desay SV、Lenovo、Magna、Quantaも対応製品を提供予定であり、エコシステムは急速に拡大しています。
また、NVIDIAはDRIVE AGX Thorを「Halos」安全システムの中核と位置付けています。Halosはクラウドから車両までを一貫してカバーし、AIトレーニング(NVIDIA DGX)、シミュレーション(NVIDIA OmniverseやCosmosを用いたOVX)、実機展開(NVIDIA DRIVE AGX)を通じて、自動運転開発の設計・検証・運用を包括的にサポートします。
日本においても、自動運転の社会実装やモビリティサービスの発展には「安全性の確保」と「迅速な開発」の両立が求められています。DRIVE AGX Thorは、AI処理能力と自動車規格準拠の両立を実現した初のプラットフォームとして、自動車メーカーや研究機関が次世代モビリティを開発する上で不可欠な基盤になる可能性があります。
重要キーワード3つの解説
- DRIVE AGX Thor:NVIDIAが提供する自動車向けAI開発プラットフォーム。高性能AI処理と自動車規格対応を両立し、自動運転や先進運転支援の開発を加速させる。
- DriveOS 7:自動車向けに設計されたNVIDIAの最新ソフトウェアスタック。センサー処理やAI推論をリアルタイムで実行できるよう最適化されている。
- Halos:NVIDIAが提唱する包括的な自動運転安全システム。クラウドでの学習からシミュレーション、車載実装までを一貫して安全に行える仕組み。
