2030年までに主要回廊でゼロエミッション輸送を実現へ
2025年9月16日、ブリュッセルにて EU の運輸担当閣僚が集まり、「Clean Transport Corridor Initiative」 に関する閣僚宣言を採択しました。これは、大型トラック向けの充電インフラを欧州横断交通ネットワーク(TEN-T)の主要回廊に迅速に整備し、2030年までにゼロエミッション貨物輸送を実現する ことを目指すものです。今回署名したのは、ベルギー、デンマーク、ドイツ、リトアニア、マルタ、オランダ、オーストリア、ポーランド、スウェーデンの9か国です。
宣言では、2030年には新型トラックの3台に1台がゼロエミッション車となり、40万台以上が道路を走行する見通し であることを踏まえ、充電インフラ整備を輸送政策の戦略的優先課題と位置づけました。ただし現状では、計画や許認可の遅延、設置場所の不足、送電網の容量不足や接続待ちの長期化、資金の断片化など、多くの課題が残されています。
このため各国は、以下のような対応を進めることで一致しました。
- 充電インフラを国家戦略の優先課題として扱うこと
- 既存送電網の柔軟な活用と能力拡大への投資
- 充電拠点データの共有と投資ニーズの把握
- 許認可手続きの簡素化と迅速化
- 再生可能エネルギーや蓄電池を活用した代替的な電力供給手段の導入
また、EU資金(AFIF)による支援を受けたプロジェクトを優先的に推進すること、そして2026年3月までに具体的な「ツールボックス(施策集)」をまとめることも合意されました。
今回の宣言は、単なる環境対策ではなく、欧州の競争力を支える物流インフラを脱炭素時代に適合させる戦略的取り組みです。日本にとっても、将来的な物流回廊型の充電インフラ整備の先行事例として注視すべき動きです。
重要キーワード3つの解説
TEN-T(Trans-European Transport Network)
欧州全域をつなぐ国際交通ネットワーク。道路・鉄道・港湾・空港などを含む物流の大動脈。
Clean Transport Corridor Initiative
EUが開始した新プロジェクト。主要貨物回廊に大型トラック用の充電インフラを重点整備し、ゼロエミッション化を加速する。
AFIF(Alternative Fuels Infrastructure Facility)
EUが代替燃料インフラの整備を支援する資金制度。今回の充電インフラ拡大でも重要な役割を担う。