インフィニオン、マーベルの車載イーサネット事業を25億ドルで買収へ ―ソフトウェア定義車と物理AIに照準―

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世界首位の車載マイコン事業にEthernet技術を融合し、次世代モビリティの通信基盤を強化

2025年4月7日、Infineon Technologies AGは米Marvell Technologyの車載イーサネット事業を25億米ドル(現金)で買収する契約を締結したと発表しました。取引は規制当局の承認を条件としており、同年中の完了を見込んでいます。

インフィニオンはすでに世界首位の車載マイコン供給企業であり、今回の買収で**ソフトウェア定義車(SDV)**のシステム開発力を飛躍的に強化します。イーサネットは低遅延・高帯域の通信を可能にする中核技術で、先進運転支援(ADAS)、自動運転、OTA(Over-the-Air)更新など、大量で安全なデータ伝送が求められる機能に不可欠です。加えて、ヒューマノイドロボットなどの物理AI分野にも応用の可能性があります。

買収対象であるマーベルのBrightlane™車載イーサネット製品群(PHYトランシーバー、スイッチ、ブリッジ)は、100Mbpsから10Gbpsまでのデータレートに対応し、安全性・セキュリティ機能も装備。顧客には世界の自動車メーカー50社以上(主要OEM10社中8社を含む)が名を連ね、2030年までに約40億米ドル規模のデザインウィンパイプラインを抱えています。2025年暦年の売上は2億2500万~2億5000万米ドル、粗利益率は約60%を見込んでいます。

この買収により、インフィニオンは自社のAURIX™マイコンファミリーと組み合わせた包括的ソリューションを提供可能となり、通信とリアルタイム制御を統合したE/Eアーキテクチャの開発を加速します。また、両社の研究開発力とインフィニオンの生産規模を組み合わせることで、さらなるコストシナジーも見込まれています。

今回の動きは、自動車の電子アーキテクチャの進化を牽引しつつ、IoTやロボティクスなど自動車以外の分野にも波及する可能性を持つ戦略的投資といえるでしょう。

重要キーワード3つの解説

  1. ソフトウェア定義車(SDV)
    車の機能や性能をソフトウェアの更新や設定変更で柔軟に拡張できる新しい車両コンセプト。高性能通信ネットワークが必須。
  2. Brightlane™
    マーベルが展開する車載イーサネット製品シリーズ。高速・安全なデータ通信を実現し、自動運転や次世代ADASに対応。
  3. 物理AI(Physical AI)
    AIを実世界の機械やロボットに組み込み、物理的な動作や作業を行わせる応用領域。ヒューマノイドロボットなどが代表例。

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