Intelligent Energyらが共同開発 重輸送分野の脱炭素化を加速
英国を拠点とするエンジニアリングコンソーシアムが、200kW級の燃料電池システムを発表しました。発表の場となったのは9月2日に開催されたCenex Expo 2025で、開発にはIntelligent Energy(IE)、Drive System Design(DSD)、General Engine Management Systems(GEMS)の3社が参画しています。プロジェクトは、英国ビジネス・通商省(DBT)の支援を受け、Advanced Propulsion Centre(APC)の「DRIVE35 Demonstrate」プログラムの一環として進められました。
システムの特徴は大きく3つあります。まずIntelligent Energyが、実績ある燃料電池技術をさらに進化させ、より長寿命で認証対応もしやすい設計に仕上げました。次にDSDが開発した新型コンバーターは、これまで150kW程度が限界だった出力を200kW以上に引き上げることに成功。この「電力変換装置」により、複数の燃料電池を連携させ、大型トラックでも十分なパワーを発揮できるようになりました。最後にGEMSは、業界標準の安全規格に対応した制御ユニットを開発。車両に組み込む際の信頼性やセキュリティも確保しています。
今回の発表は、単なる技術ショーケースではなく、実際に商用車メーカーが採用しやすいように「統合パッケージ」として設計されている点が重要です。つまり、自動車メーカーはゼロから開発する必要がなく、このシステムを導入することで短期間でゼロエミッション車を市場に投入できる可能性があります。
英国のネットゼロ政策とも直結しており、物流業界の脱炭素化を後押しするだけでなく、日本を含む世界の市場にも大きな影響を与える可能性があります。
重要キーワード3つの解説
燃料電池システム(Fuel Cell System)
水素を燃料に発電し、車両を駆動するシステム。バッテリーよりも航続距離や短時間での再充填が可能で、大型車両の電動化に適しています。
200kWコンバーター
DSDが開発した新型コンバーターは200kW超の出力を実現し、従来の150kW制限を突破。複数システムの連携で大型トラックにも十分な電力を供給できます。
ISO 26262準拠ECU
GEMSが開発した制御ユニットは、自動車業界の国際安全規格に対応。機能安全やサイバーセキュリティ面でも信頼性を確保しています。
