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水素×電動で航空の未来を切り拓く:Diamond Aircraftの「H2EDT」試験機、VTOL対応のハイブリッド構成で開発加速

diamondaircraft.com
  • Diamond Aircraftが水素×電動ハイブリッド試験機「H2EDT」を開発、VTOL構成にも対応
  • 並列型構造によりバッテリーと水素燃料電池が全モーターを同時に駆動可能
  • デジタル電力制御とデジタルツインで安全性と性能をシミュレーション
  • 水素航空機特有の課題(重量・貯蔵・安全性)にも実証的に対応
  • オーストリアの国家研究支援「Take Off」から資金提供、2026年に成果発表へ

ゼロエミッション航空の鍵はハイブリッド構造とデジタル電力制御、オーストリア発次世代航空機プロジェクトが始動

水素は炭素を排出しないクリーンエネルギーとして、持続可能な航空の未来を担う有力候補とされている。燃料電池または内燃機関による動力源として利用可能で、特に燃料電池による発電では水のみが副産物となり、二酸化炭素を一切排出しない。

こうした背景のもと、Diamond Aircraftと研究機関による次世代ハイブリッド航空機の試験機「H2EDT(Hydrogen Hybrid Electric Demonstrator Testbed)」がオーストリアで始動した。H2EDTは、水素燃料電池とバッテリーを組み合わせた“並列型”のハイブリッド構造を採用し、最大10基の電動モーターで推進力を得る。さらに、VTOL(垂直離着陸機)としての構成にも対応し、空飛ぶクルマなどの先進的航空モビリティ(AAM)への応用も視野に入れている。

本試験機は、FH JOANNEUMが開発したデジタル電力制御ボードを通じて、電力の最適な配分とエネルギー管理を自動化。TUグラーツとの連携により開発されたシミュレーションモデルを活用し、デジタルツイン環境での高精度な解析も行われる。これにより、通常飛行だけでなく、高高度・高温環境やシステム故障時の挙動も検証可能となる。

課題としては、水素燃料電池の出力密度がピーク電力に対して不足すること、水素の低密度による貯蔵スペースの問題、安全性や認証への対応などが挙げられる。H2EDTではこれらに対処すべく、冗長性のあるハイブリッド設計と段階的な評価体制が構築されている。

このプロジェクトは、オーストリアの国家研究助成プログラム「Take Off」からの資金支援を受けており、Diamond Aircraftによる水素航空研究の新たなステージと位置付けられている。成果発表は2026年前半を予定しており、将来的にはDA40やDA42といった実機への展開も検討されている。

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