- テスラの「Unboxed」製造法は、車をモジュール単位(前後、床、バッテリー)で組み立てる新方式
- 工場面積を40%削減、生産コストは最大50%削減の可能性あり
- 新型車「Model 2(仮)」に導入予定、まずはテキサスとメキシコで試験運用
- 他メーカー(トヨタ、フォードなど)も類似方式に関心、業界全体に波及する可能性
- 技術的・供給網的な課題も多く、成功すれば自動車製造の転換点に
コスト半減・工場面積40%削減へ――テスラが挑む“レゴ式”EV生産の全貌と自動車業界への衝撃
■ 「Unboxed製造方式」って何?
テスラは2023年に、これまでとはまったく違う車の作り方「Unboxed(アンボックス)」を発表しました。
従来の自動車製造では、1台の車を順番に少しずつ組み立てていく「流れ作業方式」が基本でした。
しかし「Unboxed」では、前方部分・後方部分・バッテリーなどを同時に別の場所で組み立てて、最後に一気に合体させます。まるでレゴのような発想です。
この方法を使うと、生産スピードが25%アップし、必要な人手は40%減るとされています。
また、工場も小さくて済むため、建設コストも最大30%削減できるといいます。
■ なぜ今「Unboxed」なのか?
背景にあるのは、価格競争の激化です。
中国メーカーが低価格で高品質なEVを次々と投入するなか、
テスラは現在最も安いモデルでも4万ドル以上。これでは世界市場で勝てません。
そこで登場するのが、25,000ドルの「Model 2(仮称)」。
これを実現するには、車自体の設計だけでなく、作り方そのものを見直す必要があるのです。
■ メキシコとテキサスでテスト開始
この新しい製造方法は、まずメキシコの新工場やテキサスの工場で試験的に導入されています。
完全な運用は2025年後半を予定。さらにドイツの工場でも導入が検討中です。
実はこの「Unboxed」方式、すでにテスラが一部採用しているギガキャスティング(車体を巨大な金型で一気に成形)とも親和性が高く、
車の部品数や溶接工程を大幅に減らせるのです。
■ 評価は賛否両論
専門家のあいだでは意見が分かれています。
「トヨタの生産方式を打ち壊すレベルの革命」と称賛する声がある一方で、
「部品の同期が完璧でないと破綻する」と慎重な意見も。
一部の大手メーカー幹部は「品質管理が難しく、我々の基準に合わない」と否定的です。
■ テスラだけじゃない? 他社も追随へ
とはいえ、すでにトヨタ、フォード、KIAなども同様のモジュール製造に関心を示しています。
特に中国メーカーは、すばやく柔軟に新技術を取り入れることで知られており、
「Unboxed方式」を一気に広める可能性もあります。
■ まとめ:これは自動車業界の“分岐点”かもしれない
「Unboxed」は、ただのコストカットではありません。
車の構造、工場の設計、働き方までも変える大改革です。
課題は多いものの、もし成功すれば、EVの価格は大きく下がり、
世界中で電気自動車がもっと身近な存在になるでしょう。