- テスラとステランティスがZEV目標で満点評価、他社は目標後退も。
- 1台あたりの投資額ではBYDとテスラがトップ、中国勢の攻勢続く。
- CEO報酬にEV進捗を組み込む企業はまだ一部、企業姿勢に差。
目標を掲げるだけでは不十分、実行力を裏付ける「戦略ビジョン」でEV化の本気度を測る。
ICCTの2024年レポートでは、各自動車メーカーのZEV(ゼロエミッション車)移行に対する「戦略ビジョン」が3つの指標から評価されました:
① ZEV販売目標
テスラとステランティスが100点満点を獲得。特にステランティスは欧州で2030年までに乗用車を100% ZEV化、米国では50%目標を掲げています。一方、BMWやフォードは目標を引き下げ、ボルボやルノーはPHEVを含めるよう変更するなど、後退する動きも見られました。日本勢ではトヨタが2030年にZEV比率32%の目標と控えめで、スズキは地域別でばらつきがあるものの最大80%を掲げました。
② ZEV投資額
1台あたりのZEV投資額では、テスラ(3,776ドル)とBYD(2,751ドル)が他社を大きく上回る結果に。メルセデス・ベンツやTata Motors、長安汽車なども高額投資を行っており、戦略的な先行投資が顕著です。トヨタやマツダは1台あたり数百ドルにとどまり、今後の投資加速が求められます。
③ CEO報酬との連動
CEOの報酬にEV目標を直接反映しているのは、テスラ、BYD、ステランティスなどごく一部。BMW、GM、ルノーなども一部連動していますが、EV進捗が報酬に占める比率は10〜20%台と限定的。スズキやホンダ、マツダなど多くの日本勢では、EV進捗と報酬の連動が確認できませんでした。
このように、「目標の設定→資金投入→責任の明確化」という一連の流れでEV化を推進する企業の真の戦略性が浮かび上がっています。
重要キーワード3つの解説
- ZEV目標(ZEV Target)
各社が掲げるEVやFCEVの販売比率・目標年を基に、パリ協定達成に向けた達成度を評価する指標。 - ZEV投資額(ZEV Investment)
EV工場や電池製造、原材料確保などに関する累計投資額を車両販売数で割り、1台あたりの金額で評価。 - CEO報酬連動(Executive Compensation Alignment)
企業のトップがEV販売目標やCO2削減などの進捗によって報酬が変動する仕組み。企業の本気度を映す鏡。