ついに上陸!MGの新ブランド「IM」が豪州に本格参入 ─ EV時代のプレミアムを再定義するIM5とIM6

「テスラ、気をつけろ」──MGが放つ新型EVセダンとSUV、IM5・IM6が高性能&高級感で新たなスタンダードを目指す。

MGモーターの新しい挑戦、「IM(インテリジェンス・イン・モーション)」が、オーストラリアのEV市場に風を巻き起こそうとしています。2025年9月、セダンのIM5とSUVのIM6が同時に登場。価格は$60,990〜$80,990(すべて乗り出し価格)と、ハイパフォーマンスEVにしてはかなり手が届きやすい設定です。

IMは、中国のSAICモーター、アリババ、上海ハイテクパーク開発社が共同で設立したプレミアムEVブランドで、「走るスマートデバイス」として最先端テクノロジーを車に詰め込んでいます。

外観は洗練された未来感。内装もミニマルで落ち着いており、26.3インチのワイドディスプレイと10.5インチの操作パネルが目を引きます。素材感も高く、質の良い“人工レザー”がシートやドアに広く使われており、高級感があります。

注目すべきは、すべてのモデルに後輪操舵システムが標準搭載されている点。回転半径はセダンでわずか4.99mと、都市部での取り回しは抜群です。「クラブモード」にすれば、車体が斜めに移動できるという斬新な機能も。

また、「トレースバック機能」を使えば、袋小路から自動で100mまで元のルートを逆走して脱出。「ワンタッチ自動駐車」も完備されており、ボタンひとつで完全なハンズフリー駐車が可能です。

性能面では、トップグレードの「Performance」が0-100km/hを3.2秒で駆け抜ける驚異の加速力を持ち、しかも価格はポルシェ・タイカン・ターボの約1/4。バッテリーは最大100kWh(800Vアーキテクチャ)で、わずか15分ほどで30〜80%まで急速充電が可能。航続距離は最大755km(NEDC)と、長距離ドライブにも余裕です。

ブランドとしての信頼性も気になるところですが、MGの全国販売網とアフターサービス、7年保証がそのまま使える安心感があります。あえて「IM presented by MG」と名乗っているのも、既存のブランド力を活用する戦略でしょう。


GMとの比較:成功か、未検証か?

一方で、他の老舗自動車メーカーも同様のチャレンジを試みていますが、必ずしも成功しているとは限りません。たとえばGM(General Motors)は、2020年にHoldenブランドを廃止しオーストラリア市場から撤退。その後、Cadillacブランドの電動SUV「LYRIQ」を2024年に投入し再参入しましたが、価格は約117,000豪ドルと高額で、販売数や成功の指標は未公表のままです。

GMはさらにGMCブランドのSierra EVなどの導入も予定していますが、こちらも販売前段階。メディアでは話題になるものの、実際のEV市場での成果は“これから”という段階です。

このように、老舗メーカーですらオーストラリアのEV市場ではまだ確かな足場を築けていないのが現実。だからこそ、IMブランドの“最初から買いやすくて高性能”というアプローチは、今後のEV市場に大きなインパクトを与える可能性を秘めています。


重要キーワード3つの解説:

1. IM(Intelligence in Motion)
IM(Intelligence in Motion)は、中国の自動車大手SAICがアリババ、上海ハイテクパーク開発社と共同で設立したプレミアムEVブランド。MGモーターは同じSAICグループ内の別ブランドであり、オーストラリア市場ではIM車を「MGモーターが紹介・販売する」形で展開している。

2. デジタルシャシー(Digital Chassis)
IMの核となるテクノロジーで、車体のブレーキ・サスペンション・ステアリング・駆動システムをすべて統合制御。運転の快適性と安全性を飛躍的に高める仕組み。

3. 後輪操舵(Four-Wheel Steering)
すべてのグレードで標準装備。低速時には車体を斜めに動かす「クラブモード」が可能になり、狭い道や駐車場での取り回しが大幅に向上する。


今後の展開とインパクト:

IMはすでに大型SUV「LS9」の投入も視野に入れており、将来的にはスポーツカーやファミリーカーのラインナップ拡充もあり得ると見られています。

これまでの「安くてそれなり」だったMGのイメージは完全に過去のものとなり、「プレミアムだけど手が届く」という新しい市場を開拓しようとしています。既存のライバルであるテスラ、BMW、BYD、メルセデスを本気で脅かす存在になる可能性も高いです。

また、クラウド接続やAIによるドライバーアシスト、今後のOTA(無線アップデート)による機能進化も見据えた仕様となっており、“進化し続けるクルマ”としてのポテンシャルもあります。

今後の展開次第では、GMのように「再参入はしたが成果が見えない」ケースとは逆に、IMが一気にEV市場の主役へと駆け上がるシナリオも十分に現実的です。

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