- 欧州のAAMインフラ整備計画数が6ヶ月で21件減少、特に独仏が後退
- 要因はLiliumの破綻、国の支援不足、Airbusの計画休止など
- 英国が新たなリーダーとしてeVTOL試験や法整備を推進中
- セルビア・ポーランドなど新興国も参入、ノルウェーでは試験場構築へ
- 一方、米中などでは新規プロジェクトが続出、欧州との差が拡大中
Liliumの破綻や資金難が影響、英・伊・スペインなど一部で前進するも全体では失速傾向
【記事本文】
2025年・春、空飛ぶクルマ(eVTOL)時代の幕開けが迫るなか、欧州における先進空モビリティ(AAM)インフラの整備計画は急速に失速している。昨年10月には95件あった都市・地域ベースのAAMプロジェクトが、2025年4月には74件に減少。そのうちの26件が英国に集中しており、ドイツやフランスの主導的立場は後退している。
この減少の背景には、独Lilium社の破綻、中国系企業によるVolocopterのリストラ、AirbusによるCityAirbus NextGenの開発休止、そして2024年パリ五輪でのeVTOL実用化の失敗など、複数の要因が絡む。加えて、インフラ整備や規制強化に対する国の支援不足が、欧州全体の脆弱性を浮き彫りにしている。
一方、米国や中国、中東では堅調な回復と新規プロジェクトの追加が進行中。例えば、Liliumの撤退で15件のAAM計画が危機に瀕したフロリダ州では、その後24件の新たなバーティポート(eVTOL離着陸場)計画が立ち上がっており、柔軟性と投資回復力の差が鮮明となっている。
現在の欧州AAMリーダーは英国で、スノードニアとビスターに空港ベースのバーティポートが建設済み。eVTOLの飛行試験も進んでおり、UTM(無人航空交通管理)やバーティポートに関する規制の整備も完了している。
その他では、イタリア、スペイン、デンマーク、トルコなどが前向きな姿勢を維持。セルビアとポーランドも新たにAAM市場分析対象国に加わり、セルビアでは2027年からのeVTOL運航を目指してArcher Aviationと協議中だ。
また、ノルウェーでは2025年秋を目標に、ゼロ・低排出航空の国際試験場の運用が計画中。Avinor、BETA Technologies、Bristow Norwayなどが参加し、規制サンドボックス内で貨物輸送デモ運航を行う予定となっている