- Yole GroupがGEELYとVWのEV戦略を詳細比較・分析
- VWは共通プラットフォーム戦略が遅延、Cariadの失敗が足かせに
- GEELYは柔軟なブランド展開と独自開発で多角的にEVを拡大
- スマホ企業Meizu買収やLEO衛星で次世代モビリティを構想
- 中国市場での現地最適化が両社の命運を分けるカギに
欧中2大自動車メーカーの戦略を深掘り分析──Yole Groupが明かす「長期戦の真の勝者」とは
半導体と自動車市場の調査・分析で知られるYole Groupが2025年5月、**中国の吉利控股集団(GEELY)とドイツのフォルクスワーゲン(VW)を対比する鋭い分析レポートを公開しました。その中で「誰がEV時代の長期戦で勝者となるのか」**という問いを投げかけています。
■ VWの戦略:「統一」への執念とその限界
VWは早くから共通化に注目し、内燃機関時代のモジュール思想をEVにも展開。MEBやPPEに続き、すべてのEVブランドを統合する**SSP(Scalable Systems Platform)**を打ち出しました。しかしYoleは、「理想は高かったが、現実が追いついていない」と指摘。Cariadの混乱やソフトウェア開発の遅れにより、EV移行のスピードで中国勢に大きく後れを取ったと評価しています。
さらにVWは2022年に中国AI半導体企業Horizon Roboticsに24億ユーロ出資、2023年には合弁会社Carizonを設立。ソフトウェアの内製化を断念し、中国市場に合わせた現地開発へと方針転換を余儀なくされました。
■ GEELYの柔軟戦略:「構想と実行力」でリード
一方GEELYは、Yoleによれば**「自動車を設計できるテック企業」**としての地位を確立。独自半導体開発、スマートコックピット、スマホとの連携、LEO衛星による通信インフラ構築など、モビリティのエコシステム全体を視野に入れた事業展開を進めています。
ブランドごとの多様なプラットフォーム活用も特徴。VolvoはSPA2、ZeekrはSEA、Polestarは両方を柔軟に利用。この柔軟さが市場ごとの最適化と開発スピードの両立を可能にし、Yoleは「統一より実利重視の戦略が成功を導いた」と分析しています。
■ Yoleの問い:長期戦を制するのは誰か?
Yole Groupは本レポートで、「長期戦で優位に立つのは、統一戦略を貫くVWか、柔軟に対応するGEELYか?」という問いを投げかけます。結論は明確ではないものの、「GEELYの多面的な成長力とスピードは、すでに欧州勢に対する優位性を示している」との見解がにじみます。
VWが掲げる「New Auto」が現実になる日は来るのか? それともGEELYのようなスピードと柔軟性を兼ね備えたアプローチが新時代の勝者となるのか? Yoleの分析は、EV市場の未来を読み解くための貴重なヒントを提供しています。